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2014/11/04

梅棹忠夫の思想を現代に読み直す『知的生産の技術のセンス』 #bungu


 先日発売された『知的生産の技術とセンス』(マイナビ新書)についてもう一度きちんと考えてみます。

 これは、一言で言えば、『知的生産の技術』(梅棹忠夫 岩波新書)で触れられた京大カードを使った情報整理や知的生産というものを、現代の情報環境に照らして、もう一度読み直そうという試みではないかと考えています。

 『知的生産の技術』は、情報の扱い方を考える上で、避けては通れない古典です。それについては、数年前に「元祖ライフハック! 梅棹忠夫の京大カードは現代でも通じるか」(誠Biz.ID)という記事にまとめたことがあります。また、拙著『システム手帳新入門!』(岩波書店)を書いているときに、担当編集者から「今でも年に1回は増刷される」という話を聞きました。

 実際、この本に影響を受けた「知的生産~」という本は、1960年代以降現在に至るまで無数にあります。またこれからも出てくるでしょう。

 そして、『知的生産の技術』(梅棹忠夫 岩波新書)を、ニュートラルな視点から現代の事情に鑑みて読み直そうとしているのが、『知的生産の技術のセンス』(堀正岳 まつもとあつし著 小長谷有紀監修 マイナビ新書 以下『~センス』と記)だと考えています。

  『知的~』は、1969年に刊行された同書は、40年以上にわたって読み継がれてきたベストセラーでありロングセラーです。 また、今まで幾多の著者によって、私家版が書かれてきました。
 
○インターネット、Webページ、SNS、クラウドetcのある環境における梅棹忠夫の思想
 『知的生産の技術』が登場した当時とは異なり、現時点での知的生産の環境は激変しています。一言で言えば多様になり自在になりました。
 それはたとえば、誰もがスマートフォンを持っていることであり、インターネットとWebと検索エンジンがあることでしょう。さらにいえば、ここに各種SNSやクラウドサービスなどのレイヤーが重なります。もちろんMacやWindowsを多くの人が使っています。
 これらの各種インフラ(と言っていいでしょう)に、よって情報収集と情報発信が簡単になっています。

 さてでは、この現状に鑑みて、梅棹忠夫の思想をどう読み直せばいいかというのが本書のテーマです。つまり“各種インフラが充実した現代における知的生産はどうあるのか”についての本なのです。

 その一つの例は、Evernoteを使うことかもしれませんし、テーマを発見しそれを追究することかもしれません。ただ一つ言えるのは、『知的生産の技術』で提示されている、京大カード(というツールの一種)や、それに記録することや、分類をしないことや、組み合わせから発見をすることなど、梅棹忠夫の思想は恐らく普遍的なものであろうということです。当時はなかったものや事情が変わったものが多数ある現代において、同氏の思想をどう読み替え、再評価し活用し応用するのか。決してものに淫することなく、梅棹忠夫の考え方自体をじっくり見て、その思想を現代のツールやインフラに適用しようとしたときにどうなるかに、じっくり真摯に取り組んだのが『~センス』という書籍なのです。

 だから本書は流行のライフハックやビジネスノウハウや文具関連書ではありません。そうではなく、梅棹忠夫の思想を現代の中でどう生かすかという地道な問いそのものなのです。

以下はおまけ
 私は学生時代に読んだ『知的生産の技術』に触発され、ご多分に漏れず情報カードを購入し、その当時はもろもろのことをメモしていました。今もメモに入れる日付が西暦下2桁+月日なのはそのなごりです。
 また、システム手帳ブーム当時にリフィル1枚には1項目の情報を書くという原則が提唱されていました。これももとをただせば、情報カード1枚に1つの情報を書くという、『知的~』で提唱された原則を、リフィルに応用したものだと考えられます。

 2012年のISOTで、私は、和田哲也氏、文具王高畑正幸氏、だいたひかる氏らとトークセッションをしました。ITメディア「誠Biz.ID」主催で、カイバ-のブースで行われたこのイベントの中で、このときに、司会のかたから、「文房具にはまったきっかけは」という質問がありました。
 ほかの三氏がいずれも幼少時から文具が好きだったと答えたのに対し、私は「学生時代に読んだ『知的生産の技術』がきっかけでした」と話したことを覚えています。ご本人の前だから口に出しませんでしたが、文字通り「私だけでしょうか?」という心境だったわけです(笑)。

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