日本初のオンライン・アウトドアゲーム“ネットワーク・フォックス・ハンティング”に関するまとめ
かつて私が発案したオンラインアウトドアゲーム「ネットワークフォックスハンティング」についてtwitterでつぶやいたことをまとめておきます。tweetの間違いは修正し、情報の一部を加筆しました。とりあえずまとめておきます。
'80年代後半。ワープロ専用機「東芝ルポ」のパンフレットには、クラークとスタンリー・キューブリックが、パソコンを電話回線でつないで映画「2001年宇宙の旅」のうち合わせをするエピソードが出ていた。それにあこがれた僕は、モデムを購入して、パソコン通信をはじめた。
やがて僕は小説家と出会い、僕が考えたゲーム「ネットワーク・フォックス・ハンティング」は、小説になった。そしてゲーム自体も、当時知り合った方によってNTTドコモのポケットボードイベントの原案として採用してもらった。僕は、イベントの立ち会いで、豊島園と八景島に合計3日間通った。
ネットワーク・フォックス・ハンティングは、当時出始めていたPDA、それにパソコン通信の会議室とISDN公衆電話を使った鬼ごっこのようなゲームだ。アマチュア無線のフォックスハンティングをヒントにしていたが、45分ごとに謎を出しながら移動する鬼を追いかけるところや、アクセス手段としてISDN公衆電話のみを使うところはオリジナルだった。
その後、僕はネットワーク・フォックス・ハンティング(以下NFH)を通じて多くの人と出会うことになった。ドコモのイベントも、NFHの記事を寄稿した雑誌の忘年会で会った人がつないでくれた。もちろんいろいろなゲーム仲間の存在もありがたいし、いまでも感謝している。
そしてそういう縁がまたつながるときがあるのだと思う。 NFHはまた、僕が自分のコア・コンピタンスをはじめて見つけた例だった。
NFHのきっかけになったことがらのもう一つは、小型スポーツカーで四国まで行ったこと。途中のサービスエリアのグレ電から、地元BBSに自分がどこにいるのかをアップしながら旅したのだ。今ならさしづめ「足柄SAなう」みたいなことかな。18年ぐらい前のことだ。
はじめてラジオに出たのもNFHのおかげだった。当時J-WAVEでジョン・カピラがやっていた朝の番組「Good Morning TOKYO」の「ウィークエンド・アスリート」のコーナーにFAXを送った。これは金曜日のコーナーでその週の週末にどんなスポーツをするのかを、メールやFAXなどで送り、紹介するものだった。ダメモトだった。モバイル端末を持って都内を走り回る鬼ごっこということが図らずも理解された。そして、番組に電話で出演することになった。ジョン・カピラ氏の絶妙かつ洒脱なやりとりには、さすがと唸らされたものだ。
番組での出演は、同時にゲーム開催の予告も兼ねていた。そして放送を聴いた人が、ニフティのオンライン会議室FINFODにアクセスして詳細を知り、ゲームに参加してくださり、翌週の「ウィークエンド・アスリート」にその方が感想を寄せてくださったのもいい思い出だ。
NFHをやっていた当初の通信環境は今とは全然比較にならない。まずインターネットは一般に接続できるようになったばかりだった。だからインフラとしてはパソコン通信niftyの個人会議室を使った。通信手段は、ISDN公衆電話。スマホはおろか、ケータイはまだNTT製の大型なものしかなく無線LANもなかった時代だ。
NFHでは、ISDN公衆電話、通称グレ電を探すのがポイントの一つだった。グレ電を探して、PDAとモジュラーケーブルで接続。ニフティにアクセスして、会議室上にアップされているフォックス(鬼)のヒントを読み、その地点を推理して移動する。これを45分ごとにほぼ一日中繰り返す。
端末も今とは隔世の感がある。参加者によってまちまちだったが、人気があったのは、モバイルギア、HP200LXあたりのいわゆるPDA。オアシスポケット3の人やマシフ(オムロン)を使っていた人もいた。私も最初は、Windows95のノートPCを使っていた。そのうちリブレットが登場した。
Palmの人もいたっけなぁ。モデムが内蔵されていないPDAであってもPCカードスロット用のモデムを接続したりしていた。そうそう、HP200LXは、PDAというよりはDOSベースの超小型パソコンだった。ザウルスを使っている人もいたっけ。NFHはさながら小型端末の機種対抗戦だった。次はどんな端末の人が来るんだろうと、毎回楽しみだった。
NFHをやろうとしたきっかけのひとつは、モバイル雑誌の記事だった。といってもそういうゲームの記事なんかはなかった。モバイルがテーマなのに、分解とか改造とかのがりがりな記事ばっかりだったのだ。せっかく屋外で利用できる端末なのだから、通信と組み合わせて何かできないか。
そんな風に思い、また四国に車で行った経験もあって、NFHを思いついた。当時のモバイル雑誌にはほとんど取り上げてもらった。『モービルPC』(ソフトバンク)『モバイルプレス』(技術評論社)などだ。『ソフマップワールドハイパー』ではゲームそのものの連載をすることになった。これは5回ぐらい続いた。最初は理解してもらえなかったけど、『日経モバイル』にはなんと8ページにもわたって特集してもらった。一般誌でも『AERA』とかにもちょっとだけ出た。ニフティの情報誌『オンライントゥデイ』にも紹介された。
また、ゲームを原案とした一条理希氏の小説『ネットワーク・フォックス・ハンティング』(集英社)も月刊アスキーやマッキントッシュ専門誌などの書評欄で取り上げられた。
NFHの参加者はMAXで1回十数人ぐらいだったかと。その十数人がそれぞれまちまちなPDAとかモバイルPCなどを持ち寄って遊んでいた。10時ぐらいにスタートし、都内を山手線や地下鉄を使って移動。ISDN公衆電話を見つけてアクセスし、フォックスと呼ばれる鬼の居場所を探す。うまくすればゲットし、放出してから次のポイントでのゲットに備える。 毎回本当に面白かった。死ぬほど面白かったし、フォックス役で出したヒントを見破られたときは、心底くやしかった。すばらしいあそびだった。
思えば、端末そのものにはさほど興味がなかったのかもしれない。そうではなくて端末と通信環境を使って何か遊べないかと考えた結果できたのがNFHだった。それはまた小型の端末を、性能の極限まで(たとえば通信性能とかバッテリーの寿命とか)つかってどう遊べるかの実験だった。
参考:当時の参加者の一人WataruさんによるBlogエントリー
Wataruさんのこの記事を読んでも、やはりこの種のゲームとしてはかなり早い時期にやっていたなあと感慨深く思うわけです。
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コメント
向本郷さま
コメントありがとうございます。
私がNFHを発案して遊んでいたのは、もう20年近くも前です。
誰もがスマホを持ち、いつでもネットにつながっている現在とは違い、ネット人口(パソコン通信とインターネット)そのものが少なく、その中でもバッテリー駆動ができるノートPCやPDAを持っている人は本当に数が少なかったと思います。携帯電話、PHSは普及が始まったばかりで、ネット接続はほとんど不可能。iモード前夜でした。
そんな時代に、携帯端末で外出先でネット接続するなんて、誰も考えていなかったと思います。しかも接続に使うISDN公衆電話は設置場所も限られています。
NFHは、モバイルPCやPDAの本当の可能性を見いだすべく、私が発案して遊んだゲームなのです。HP200LXやリブレット、モバイルギア、ザウルス、オアシスポケット3、Palm各種などメーカーもジャンルも異なる端末のユーザーが思い思いの工夫を凝らして参加してくださったのです。
また、この頃には、テレビ番組「逃走中」もまだありませんでした。
この手のものとしては、本当に最初のもので、誰もが思いついたかもしれませんが、誰もやらなかったのです。NFHのネーミングは私のオリジナルです。
ともあれ、誰もやったことがないジャンルのことをやるのはとてもエキサイティングな経験でした。そういえば、このエントリーにはいつ頃のことか書いていませんが、時間を見つけてその辺も書いてみようと思います。なにしろ、私と当時の参加者しかそのことはしらないのですから。
コメントありがとうございました。
投稿: 舘神龍彦 | 2016/03/30 22:17
現在進行でNFHをコンスタントにやっている集団といえば、「ニコニコ鉄道株式会社」という、ニコニコ動画出身の架空鉄道コミュニティでしょうか。関係者が(おそらく館神氏とは独立に)ルールを考案した上で実施されて現在に至っているのですが、Twitterネイティブの時代のNFHであるゆえ、このエントリで館神氏が述懐されていることと比べると、やはり隔世の感があるなぁ…と思います。
投稿: 向本郷 | 2016/03/24 21:37
たたたさん
私が出したヒントで覚えているのは、「女性がたくさん集まる神社仏閣のそばのターミナル駅」というものでした。
みなさん、原宿に行ったんですが、実は巣鴨でした。いわばクイズみたいなものですね。
これに限らずヒントは、嘘ついちゃいけないし、間違いがあってもいけないのでけっこう苦労して考えた覚えがあります。
コメントありがとうございました。
投稿: 館神龍彦 | 2012/07/29 20:09
こんにちは!
興味深い内容でした。
やっぱりポイントはヒントの良し悪しだと思うのですが、どのようなヒントを出されていたのですか?
投稿: たたた | 2012/07/26 21:38