合理性を最優先した文具王流ライフハック:『究極の文房具ハック』
「~ハック」と銘打たれたあまたの本の中にあって、文具にフォーカスした本。それが文具王こと高畑正幸氏による『究極の文房具ハック』である。
本書の特徴は、1文字のキーワードで表現された各章に端的に表れている。この一文字はテーマごとの各ハックに通底する原理原則であり、章扉ではそれが逐一説明される。
それはたとえばこんな感じだ。
省の章 -仕事を自動化していちいち考えることを省く-
ここでいうところの「省く」は、動作よりも、むしろ考えることを省くことだ。毎回、同じような作業を行うときに「毎回、考えたり思い出したりする必要のないことは、考えなくてもよい仕組みを作ってしまう」ことだ。(後略)
たとえば、カタログの構成には緑のラインマーカーを使うハックでは、方法とともに、そこに使われるツールとその必然性が同時に解説される。
曰く、カラーのカタログを校正する際には、色やレイアウトに注意を逸らされることが多い。だから、いったんモノクロコピーをとって、それをチェックしていく。間違いがないと確認できた部分に緑のラインマーカーをひいていく。色が緑であることにも意味がある。ピンクや黄色では、目が疲れる。同時に「グリーンは正常・安全」を表す色でもあることが説明される。
文具王は、ここでカラーのカタログの色をモノクロにする(=“省”)で、目移りの要素を断ち切っている。また、使う色にも必然性を持たせている。それは、緑という色が持つイメージを、いわば歴史的経緯とか伝統のような、意味の地下茎までたどって必然として位置づけているわけだ。
さらに別のハックでは、社内で使う自分用の紙を黄色と定めている。そして黄色を習慣的に使うことで、自分の中にスイッチが入る感覚が生じているともかかれている。また、黒やブルーといった筆記具のインクとの相性という必然もある。
おそらく文具王の中では、色と意味の対応関係がクオリアとして構成されており、その意味の体系を利用することで、省力化と自動化が図られているのではないかと想像される。
マルチペンの色を使い分けて情報を分類する方法はよく知られているが、文具王にあっては、色の意味によって世界が秩序付けされているのだ。
そういう意味では、これはハックの紹介本と言うよりは、ハックを通じて文具王の生活・仕事哲学を感じる本といえるかもしれない。
ともあれ、実践的という意味ではこれほど実践的な本もない。
登場するハックの数々は当然のことながら、文房具を使うことによってなされる。マインドとかテクニックというより、簡単かつ安価に入手できるツールを使うことでそれまで成しえなかったことがとても快適に実行できるようになる。
まずツールとその使い方があり、そうすることの理由が明確な論理によって説明される。ぎっしりと詰まった活字はそれを堪能するために必要な量なのだ。
再読三読のたびに、発見がありそうな本である。
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