モバイルに完全に軸足を移した著者の目を通してみる世界:『「どこでもオフィス」仕事術』
以前のエントリーで少しだけ紹介させていただいた『「どこでもオフィス」仕事術』(中谷健一著 ダイヤモンド社)。先日、編集者の方から献本いただき読了したので今回はこの本を紹介させていただく。
オビに“なぜ喫茶店のほうがはかどるのか”とあるように、これは無線LANやデータ通信、さらには各種クラウドツールが普及・整備された現代における“外仕事のすすめ”だ。
著者の中谷氏は、会社でも自宅でもない第三の場所=サードプレイスにおけるモバイルワークを推奨する。
会社によっては個人のPCが社外では利用禁止であることも踏まえつつ、それでも、その種の制約のない人や、社外の勉強のスタイルとして、会社で許可されているかどうかではなく、スタイルとしてのノマド、いわば“ノマドマインド”とその実践としてのモバイルをプッシュしている。
その理由は、ここ数年のデジタルインフラの普及と整備にある。
ノートPCには、無線LAN接続機能がほとんど標準装備され、またバッテリー持続時間が長くなった。さらに街には公衆無線LANスポットがどんどん増えた。そしてデータの保存場所として、あるいはアプリケーションとして、各種クラウドツール(gmailをはじめとするWebメールやDropboxなどのWebストレージ)がある。また、無線LANが使えない場所では、データ通信接続サービスを利用する。
これらのツールと環境があれば、もはやオフィスに縛られて仕事をする理由はない。いやむしろ、内容に合わせて仕事をする場所を自在に使い分けようというのが同書の提案だ。たとえば、精緻な企画書を作るときにはルノアールを使う。無線LANサービスに加え、店の雰囲気やメニューなどの理由でじっくり考える仕事をするときは、ルノアールなのだという。本文中には具体的な支店名まで書かれていたが、このピンポイントな店選びには思わずうなってしまった。
そのほか、ドトールやマクドナルドと言った店の特徴とその使い方が、具体的に紹介してある。
これらのサードプレイスの詳細な比較も参考になる。ネット接続環境の有無もそうだが、椅子やソファ、照明の感じ、電源利用の可否、さらには長居のしやすさ(!)などについて、きちんと比較紹介したのはおそらく本書が初めてではないだろうか。
コンビニエンスストアのキヨスク端末からネット上にアップした文書をプリントする方法や、これらサードプレイスの各種情報を網羅したサイトも紹介されている。
前書きによれば著者の中谷氏は、リクルートなどで情報誌の創刊やWeb事業の企画立案に携わったあと起業。複数の企業や個人とともにプロジェクトチームを作って働くスタイルになった。そのため、自ずから外出先や移動先で仕事をすることが多くなった。いわばこれは必然的なスタイルというわけだ。
本書が提案するノマドスタイルは、モバイルPCを使っている人ならばある程度は実践しているものだろう。それでも私にとって興味深かったのは、著者の軸足が完全にモバイルよりであり、いわばどっぷりモバイルしている人の生活と意見が垣間見られたからに他ならない。
クラウドにデータを置きつつ移動し続けるデジタル狩猟民=ノマド・マインド。
オフィスを飛び出した著者が見ている世界を通じて、自らのモバイルをもう一度見つめ直す。本書はそんなきっかけになる一冊だ。
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