下克上ツールとしての手帳
今回の手帳/システム手帳のブームが、終身雇用制の崩壊と密接な関連があることは、以前にも書いた。それをふまえて言うのならば、現在もてはやされている「夢をかなえる手帳」のたぐいは、言ってみれば下流社会からの下克上ツールなのではないか。
夢をみたり、目標を立てたりすることは誰にでもできる。そして手帳は、高くても一万数千円も出せば、立派なものが手に入る(もっと高いものはあるが、それは高級なものだ)。つまり、ふつうに生活していれば所得の水準にさほど左右されない範囲で入手できるものといえる。
その一方で所得の格差は広がり、「年収300万円~」「希望格差社会」「下流社会」といった刺激的なタイトルの本がそれなりの反響を持って受け入れられている。それはつまり、ごく一部の高所得者層をのぞけば、こういったレベルに転落しかねない現状を示唆しているといえる。
そこで救いになるのが、今回のブームで登場した一連の手帳だ。これらは、夢をかなえる方法論の具体的な形として存在している。また別売りの活用マニュアルも存在している。特に、企業の経営者などの名前を冠したものは、彼らのカリスマ性が強力な磁力を持っている。それはまた、終身雇用制が崩壊した現在の世の中で、会社への失われた帰属感の埋め合わせにもなるものである。
雇用制度が変容し、社会のあり方が変わりつつある今という時代に、カリスマ経営者の名前を冠した手帳がもてはやされるのにはこういう背景があるのだ。
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