以前のエントリー「PDAはどこへいく」をはじめとして、このblogでは、PDAのことを何度となく取り上げている。そして最近ドコモのビジネスFOMA「M1000」に関しても書いた。これは、このblogにおけるPDA関連の一連の記事の続きである。
「PDAはどこへいく」の結論として、“PDAは検索機能付きのデジタルデータになる”と書いた。正直に告白すれば、あの時点ではこの結論に強い確信を持っていたわけではなかった。というより、“なんとなくでてきたよんどころない結論”でしかなかったのだ。
だが、最近この結論はあながち間違いではなかったことに気がついた。筆者は「PDAについて 再論」の中で、PDAは単機能の小型機器に進化したと書いた。それは、たとえば、電子辞書であり、iPodに代表されるデジタル音楽プレーヤーであり、メール端末としての携帯電話である。
この3種類の機器に共通することがある。まず、いずれも蓄積するデータの件数は大量でありながら、使い勝手のよいインターフェースで簡単に検索できることだ。
また一度に参照/利用するデータがひとつしかない点も同じだ。電子辞書なら単語、iPodなら曲データ、携帯電話なら一通のメールかまたは、ひとつのWeb(※1)を利用する。 これらの機器がそろって小型の液晶ディスプレイしか持っていない=それで済んでいるのは、参照するデジタルデータの情報量がさほど多くないからだ。特に、iPodのようなデジタルオーディオプレーヤーの場合、データは音だ。場合によっては、ディスプレイすらいらない。げんにiPodシリーズのローエンドモデルであるiPodShuffleには液晶ディスプレイは存在しない。
そもそも、PDAは、筐体のサイズに制約があるため、大型で高解像度の液晶ディスプレイを装備できない。この物理的な制約の当然の帰結として、上述の電子辞書、デジタルオーディオプレーヤー、メール端末としての携帯電話などの小型デジタル機器は、単機能で単一のデータを利用閲覧する形になった。
ディスプレイについては、ノートパソコンと比較すればもっとはっきりする。現在販売されている唯一の国産PDAであるZaurusシリーズの最新機種SL-C3000の液晶ディスプレイの解像度は、640ドット×480ドットだ。これに対し、現在のモバイルユースの軽量ノートパソコンの解像度は、1024ドット×768ドット。Windows95登場当初はVGAがやっとだったが、今やXGAが当たり前になっている。OSやソフトウェアが完全に同一ではないので、一概に比較できないが、それでもPDAとノートパソコンのは歴然としている。一度に表示できる情報の量は、当然のことながらノートパソコンが圧倒的に多い。
そして繰り返しになるが、ノートパソコンは小型軽量化とバッテリー利用時間の長時間化が進んでいる。小型軽量というPDAの長所は、もはや相対的な利点でしかない。つまりPDAを積極的に選択する理由は少なくなっているのだ。
インターフェースもそうだ。上述のZaurusシリーズをのぞけば、キーボードを標準装備するPDAはもはやないに等しい(※2)。つまり、PDAは、デジタルデータを蓄積できるにも関わらず、それを表示させるディスプレイは小さく、検索や編集のためのキーボードは標準装備されていない。つまり、データを大量に蓄積し、自在に編集し、検索するというパソコン的な使い方は、もはや現時点のPDAでは、とてもやりにくいということだ。
まとめると以下のようになる。PDAは単一機能の小型デジタル機器としては浸透しているが、PDAという名前のままでの成功例はないに等しい。サイズ的な制約もありディスプレイは小さく、キーボードも標準では付属しない。OSを持ち、その上で動作するソフトウェアを用意することで、依然として“小さなPC”的存在としての汎用性を持ってはいるが、それは同時に末端のユーザーへのわかりにくさにつながっている。
そして一般のユーザーが利用するのは、簡単なインターフェースで単一データを検索して利用する形の小型デジタル機器、すなわち、電子辞書であり、デジタルオーディオプレーヤーであり、メール端末としての携帯電話なのである。
参考までに、過去のPDA関連記事をあげておく。
PDAはどこへゆく
無線LAN+PDAの通話サービス
PDAについて 再論
PDAの終わりとスマートフォンのはじまり
また、「Club Newton」の橋本氏が、「PDAはどこへゆく」の記事を読んで、ご自分のサイトを再開させるきっかけになったと書いてくださったことが、筆者にはとてもうれしく、PDAについて引き続き考える大きなきっかけのひとつになっている。遅ればせながら、ここにお礼申し上げたい。
※1 すでに、NTTドコモのM1000のようなOpera搭載の携帯電話が登場している。ただこれは現時点では例外と見なしうる。
※2 そのZaurusにしても、シリーズ登場当初の製品はキーボードを装備していなかった。“液晶ペンコム”のキャッチコピーどおり、ペン入力での利用を最大の特徴としていたことを考えると隔世の感がある。
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